今もなお人気の高い鳥獣人物戯画
世界遺産として
日本の文化遺産で世界的に地位が認められるというのは大変誇らしいと、そう感じる日本人は多いはず。自分たちの国に対して興味関心が薄い人がいるのは仕方がない、なにせこうして執筆している筆者も10代のまだまだ血気盛んな中高生時代において、日本なんてつまらない国だと勝手に決めつけていました。将来は英国などへ留学を夢見ていた時期もありましたが、いつしかそうした感情はなくなり、日本という国がこれまでの歴史で生み出してきた文化について学んでいくと、なんて面白いんだと思うようになっていった。それこそ戦国時代では小姓、要するに男色が容認されていた時代で、かの名君として知られている風林火山という四字を生み出したかの武田信玄が、小姓に宛てた手紙の中で浮気についての釈明と謝罪を記したものが発見されるという、知ってよかったのかどうかと考えると、知らなくて良かった、もしくは恥ずかしすぎる手紙が出てきたことはなんとなく同情心を持ってしまいます。
ではここではそんな戦国時代の男色について話をするのかというものではありません、それこそ物凄い濃い話になってしまいますので、又の機会にするとしよう。今回は日本の文化的遺産の中で世界遺産に認定され、多くの人に創造的な干渉を与えている作品と言ってもいい『鳥獣人物戯画』をピックアップしてみよう。こちら、現在までの日本において『最古の漫画』としてその名を残している遺産であり、当時の文人たちがユニークな発想の下で様々な創作物を生み出していたことの証明にも繋がっていくものだ。
そしてこの鳥獣人物戯画を一度は見たいと思っている人は多いはず、中にはもうそれこそ何度見たか分からないくらい展覧会へと足を運んでいる人もいることでしょう。その中には締め切りに追われていて、現実逃避兼何かいいアイディアが見つかるかもしれないと途方に暮れている人もいるかもしれません。とてもシュールな話ですが、何気にこうしたところからどっと驚くようなアイディアが生まれることもあるので、中々侮れなかったりするものです。
年に一度のお披露目会
鳥獣人物戯画についてとても簡単なあらましを説明しておくと、一連の作品が創造されたのは憶測で『12世紀~13世紀』と考えられています。この辺のところは未だはっきりとしない、いつ、そして一体誰がこれを作ったのかも分からないといわれているものですから、考古学を専門としている研究者にしたら最高の材料でしょう。ですがこの作者がはっきりとしていないというのも中々関心が大きい、なにせ創造主についても色々な憶測が起てられるからだ。この作品では動物たちが二本足で行動し、まるで人間のような振る舞いで絵巻物の中で生き生きとしており、また悠々自適にすら感じられるくらい生活をしている姿が表現されている。
そんな作品を一度は見たいと思っている人も多く、その価値が世界的に証明されているからこそ鳥獣人物戯画は毎年一定の期間で展覧会が開催されて、一般公開されています。今年2015年だと4月28日から6月7日まで東京国立博物館にて公開されていたので、早速とばかりに訪れた人も多いはずだ。ちょうど大型連休期間に差し掛かっている時期なので、色んな意味で開催することに意義があります。余談だが、この時期には芸術的な催し物が多く開催されているので、全国各地から東京へと出張ってくる人がとても多い時期でもあります。
芸術的な側面もありますが、中には二次創作を楽しむ人達が趣味嗜好を全開にして繰り広げる、真夏の祭典の準備運動期間と言っても良いかもしれません。かくいう筆者もそんな1人なわけで、G.W.はある意味加熱しっぱなしだ。とはいえ、さすがに連休中訪れることはない、色んな意味でこの頃は修羅場っている最中なのです。こう言えばこの世界に精通している人なら理解できるはずだ。ちなみに今年のこの時期もまたそんな状況だったと私生活をさらけ出してみる。
通常は一般公開されていない
時期を外して訪れているため、G.W.中の混雑具合を把握しているわけではありませんが、恐らく興味を持って訪れる人の数は少なくないでしょう。博物館に訪れる人の中には鳥獣人物戯画が出るからこそ来ると第一目的にしている人も絶対にいるはず。何故かと言うと、この世界遺産は通常一般公開されていない作品だからだ。
鳥獣人物戯画が管理されているのは京都の栂尾山高山寺にて管理されていますが、毎年一般公開期間が過ぎるとこちらで厳重なセキュリティの下で管理されているので、関係者以外手を出すことが出来なくなります。さすがに関係者として入ろうと考える人はいないでしょう、昔的に言えば出家しなければならないので相当覚悟のいる選択肢だ。この時代、僧侶としてやっていくだけの根性を持っている現代人は跡継ぎとして生まれた人くらいでしょうと、勝手に決めつけておく。
創造が織り成す物語として
作品については後ほど詳しく語るとして、先に個人的な偏見じみた感想を述べさせてもらうとするなら、この作品を見るとどの時代においても独創性を働かせる人がいるものだなぁと感じる。鳥獣人物戯画は時代の風刺画と語る人もいますが、それを抜きにしても個性的すぎる。現在までに作者は複数いたとも考えられていますが、恐らくその中には最初から最後まで制作に関わり続けていた人間が必ず存在しているはずだ。その人物が何を考え、何を思い、何を真に伝えようとして鳥獣人物戯画を遺したのか今後永久にはっきりすることはないかもしれません。
ただ1つ言いたいのは、こんな素晴らしい作品を残してくれてありがとうと、何様のつもりだ的に感謝の意を述べておく。それくらい、筆者からしても影響を受けた作品なのです。単純に見ても面白いのもそうですが、内容から様々な感性が生まれてくる日本の史実において最高傑作といってもいいレベルの文化遺産だ。